
水のはなし
天然水の人びと
アクアセレクトGMの竹本大輔による水紀行
第41回 浦村奇跡の牡蠣編6
三重の牡蠣が安心な理由。この冊子ももちろんだが、この地域の多様性と自由競争こそが、ますます高品質を産み出している土壌となっていると感じた。

こういった行程管理も安心を提供する一つ。

焼がきのお店
竹本
面白いですね、夢があるなあ。そういうふうな、研究熱心というか、前向きに取り入れていく土壌がおありなんでしょうね。
村田理事
そんなことないよ(笑)言うだけで実行力ないでな(笑)
竹本
そんなことはないと思います。村田さんも山本さんも、こちらのご出身ですか?
村田理事・山本支所長
そうやよ。
竹本
そうすか、やっぱりこちらのご出身の方がこの漁業を続けてらっしゃるパターンが多いんですか?
村田理事
そうですね、あの、そのただ他所からこっちへ来て、こっちの嫁さんと一緒になった人も2・3人おるけどね。
竹本
なるほど。今は他所と交じり合って、どんどん活性化されてる最中という所なんですね。
村田理事
やっぱり他所から入ってきた人はその人なりに発想が違うもんで、なかなかエエ具合に働いております。
竹本
素敵ですね。
山本支所長
やっぱり土地のもんだけでは、その土地の考えしか出てこないからね。
竹本
そうですね。僕ら会社組織もずっと一緒やと、硬直化することが業績悪化に繋がりますもんね。
村田理事・山本支所長
そうそう。
竹本
ちなみに、焼がきのお店って、こちらで何店舗くらいあるんですか?
村田理事
今浦と本浦と合わせて浦村地区なんですが、30軒ぐらいあるなあ。
竹本
そうそう、昔、どこのお店か忘れましたけど、この浦村のどこかのお店で焼がきを食べさせてもうたんですよ。薪でブワーっと火を焚いてトタンで焼いてくれはるお店に、プライベートで来て。それでめちゃくちゃ美味しくって感動して、なんで美味しんですか?って聞いたら、実は宮川の水がええから、ここの牡蠣美味いんやでって話を聞いて、また感動して。それで今回、ちゃんと取材をしたいなぁと思って来たんです。
村田理事
そうなん。
竹本
どこのお店やったか忘れたんですけど、当時ここ来るのめっちゃ大変やった思い出があります。でも今日はめっちゃ早く来ることが出来ました。高速道路伸びたんですか?
村田理事
宮川からやったら、すごい便利になったよ。パールロードも無料化になったしね。もう鳥羽まで一直線やもんね。
竹本
その影響で、焼がきのお店が増えました?
村田理事
そやね。パールロードが無料化なる前は、1軒くらいしかなかったですな。
竹本
それまではみなさん漁業やってらっしゃって、それを市場に卸してたってことなんでしょうか?
村田理事
あの、ここの漁業組合はな、ちょっと違うんさ。実はこの漁協は「牡蠣を勝手に売って結構です」という形をとっています。漁業組合がもう売るのも面倒くさいからな。漁協も怠慢なんさ、要するに(笑)
竹本
えっ?漁業協同組合を通さんと、個人で売ってるんですか?
村田理事
ここはなあ、元々真珠の養殖からスタートしたんさ。ほいで、真珠とか牡蠣とかを売る能力なかったんです。しかも牡蠣なんかは足が早いでしょ。だから漁業組合はあんまり関知せんと、現場だけ貸して漁場料だけ払ろうてもろたら、勝手に売ってくださいって、そういう感じでずっと続いとるんさ。
竹本
ある意味、漁業組合の最先端という取り組みですね!!
村田理事
そう。ある意味な。今流行りの「6次産業化」も簡単なんさ。
竹本
さっきの話がやーっと繋がりました。そういう漁協だからこそ、若手が育ちやすい、新しいビジネスが生まれやすい環境であるんですね。
村田理事
そうそう。それで、こんな焼がきのお店がこんなにも出来るんですよ。他では出来んへんですわ。
竹本
できないですよね。一応漁業組合の許可。はー、面白い!ちょっと、大台町と通じるところが、宮川村と通じるところがありますね。
山本支所長
陸(おか)では、自由にしなさいやろ、まっ、海では漁業権なんかが発生するんで相談はしますけど、もう「牡蠣を売るのだけは自由」となってますな。値段も自分らで決めてもらってます。
竹本
おもしろい。これ日本の牡蠣養殖場で、こんなシステムあるんですか?大半の漁業組合はそうじゃないですもんね。
山本支所長
そうやろうね。
村田理事
業組合がいろいろ中心になって決めている地域が圧倒的に多いね。この地域はある意味では「縛り」がないもんで、時代に即応したビジネスが、それぞれが出来るようになった。
竹本
まさしく今国が進めている6次産業化のベースの考え方ですね。面白そうだ。今、6次産業化のプランとかおありなんですか?
村田理事
自分ら漁協は持ってません(笑)
けど、持ってる事業者や人は、おるやろな。
けど、持ってる事業者や人は、おるやろな。
竹本
あっそれも勝手に。あっそれも勝手に発展していってくださいねっていう感じですね(笑)
欲がないというか、素敵だと思います。
欲がないというか、素敵だと思います。
村田理事
まあ欲がないというか、ある意味その方が営業的にも楽なんさ。固定費もかからへんしね。
竹本
なるほど。
村田理事
ほいで、市場なんか開いてしまうと、ランニングコストがすごく掛かる。そんなことよりもランニングコストが全然かからへん、という意味もあるんです。
竹本
経営的な観点もあるんですね。「スモールガバメント」的な。最先端ですよ。面白い。それで、焼がきのお店も増えてきたんですね。納得しました。
村田理事
一般の漁協からは考えられへんでな。他の所は漁協行って、漁協で牡蠣を仕入れて初めて商売が成り立つというやり方をやっているところが多いと思います。
竹本
あっ、仕入れも、漁協が握ってるところが多いんですね。
山本支所長
自分が生産したけど、漁港から又買いもどさないかん、というのはよく聞く話やわな。
竹本
需要と供給のバランスや品質管理ではありの部分かもしれませんが、それが足を引っ張ったりすると問題ですよね。
村田理事
もう一つ問題があるんさ。つまり生産業者とそこに持って来る出入り業者が違うということも、起きうると思うんさ。
竹本
生産業者と出入り業者…あっそうか。作り手と売り手が違うということが作ったり水揚げした場所と売っている場所が違うってことなんですね。ちなみにここ浦村は牡蠣の作り手が、漁場料はろて、売り手になってるんですか?
村田理事
そうさ。
竹本
売り手と作り手が一緒っていうのは、僕ら消費者からしたらめちゃくちゃ安心な部分ですよ。
村田理事
まあ、生産者から直で食べてもろてるわけやでな。
竹本
そうですよね。言うたら文句付けようがなにしようが、その生産者とのやりとりだから、生産者もレベル上げていかなアカン、という話になりますもんね。これからの時代にめっちゃ合っていると思います。
素晴らしく手際の良い殻むき。あっという間に、大粒のそれもプリップリの牡蠣が取り出される。あー旨そうだ!


竹本大輔