水のはなし

天然水の人びと

アクアセレクトGMの竹本大輔による水紀行

第48回 妙高上越 食の魅力 武蔵野酒造さま編2

武蔵野酒造さまへの訪問前、妙高山を一望できる「いもり池」を散策した。画面右手に広がるのがいもり池だ。凛とした空気の中キラキラと光が雪に反射する。日本有数の豪雪地帯も、今日ばかりは穏やかな表情。
上越市は歴史の街だ。この地特有の「雁木(がんぎ)」が通りに沿って建てられている。「雁木は、おもに冬季の通路を確保するために家屋の一部やひさしなどを延長したもの(市のホームページより)」とある。この豪雪地域に生きる人たちの知恵に脱帽する。そしてこの風情に懐郷を覚える
竹本
ずばり小林社長がお考えになってらっしゃる「上越の魅力」って言うとなんでしょうか?
小林社長
それは、もういっぱいありますよね。
それは歴史であったり、それぞれの地域そのものが特色なんだって思います。
小さな村でもそうだと思うんです。
もちろんそれらの魅力をキチッと、つかまえて、発信しなければならないんですけれどもね。
例えば人を呼ぶ、そして呼んだ人に感動を与えるためには、「差別化」がいるわけですよ。
この地域は何が売りなんだって話から、きちんとしなくちゃいけない。
そのとき上越は、一つは歴史的なモノもあるし、気候風土もあるし、それにまつわる食べ物、我々みたいな飲み物も含めて、結構魅力はいっぱいなんです。
ただ、マスコミ的に騒ぐような目玉商品ってのはないんです。
竹本
なるほど。気候風土、そして歴史を含めて魅力なんだ、ということですね
小林社長
新潟の魅力ってなんでしょうか?っていうことを例えば新潟県外の人に聞くと「地酒」「米」あと「佐渡」ぐらいしか言ってもらえない訳ですよ。
これだとね、キーワードが全然足りないんですよ。
いま言った「地酒」や「米」なんてものは、みんなどこかしらにあるわけですよ日本全国。
だから、もうちょっと私たちが「これ良いんじゃないの~?」っていうお宝を見つけて、そしてそれを磨き上げて、どうやってアピールするか。
こういうことがとっても大事だと思っています。
ところが、不得手なんでしょうね。
牧野社長
悪い言い方すると「下手」ですね。良いモノはとてもたくさんあるんですけど、「発掘」も「見せ方」も「発信の仕方」も下手。
隣の長野なんかっていうのは、すごくうまいんですよ。
小林社長
そうですね。やっぱり「観光立国」ですから、きちんと県外からのお客様の外貨を獲得しなくちゃいけない。
それは観光ももちろんだし、農産物もそうですね。リンゴとかね。
竹本
たしかに。長野県っていうとリンゴ以外にも、高原の「レタス」とか「キャベツ」とか有名ですものね
小林社長
それはやっぱり、外貨を獲得するためにやってる。
地元の人が食べる量なんて知れてるわけですよ。県外の人たちが「長野ブランド」っていわれるモノを評価をする。その評価が高まったものを作る。売れるって決まっているものを作ればいいわけですから、これは一つの「仕組み」と言って良いと思います。その仕組みが出来てるっていう感じですね。
竹本
その長野県の隣の新潟県において、そういった差別化が進んだのは何が違いだと、お考えなんですか?
小林社長
長野県には、もう完全に農作物だけじゃあ生きていけないって現実があったからだと思います。
竹本
新潟は、ある程度恵まれてる、ということでしょうか?
小林社長
その通りです。
新潟はコシヒカリさえ作っていれば、もう安定なんですよ。
竹本
そうか。なるほど
小林社長
コシヒカリは高値で流通するお米の王者なんですよ。
って事は値段も高く売れるし、農家さんはある程度お金を持っている訳なんですよ。
それに満足できるもんだから、他の農産物なんて作らなくていいんですよね。
で特に冬場は全然雪で覆われちゃってるという気候風土もあって、ちょうど米作りがイイよねとなった。
そしてそれが一番の産業だったわけじゃないですか。
竹本
いわゆるコシヒカリ一本に頼ってしまったブランディングをずっとやってきたから、ということなんですね。
ちなみにその「コシヒカリ頼み」で、何か問題が起きているんでしょうか?
小林社長
そうなんです。
竹本
それはコシヒカリが値崩れしてるって事なんでしょうか?
小林社長
勿論それもありますね。
その原因は他地域のお米の台頭です。
品種改良の技術革新もあり、北海道でも旨い米が取れるようになったんです。
竹本
それは良くお聞きしますね。
小林社長
品種改良して寒冷地でも美味しいお米ができる。
そういった時代の流れのなかで「じゃあコシヒカリは何をしてたんだ?」って話ですよね。
竹本
差別化要因ではなくなってしまったっていうことですね。
それはいつぐらいからの話ですか?
小林社長
もうだいぶ前ですよね。20年30年も前からの話です。
牧野社長
もう「新潟産コシヒカリ」というだけでは賞も取れない時代になっちゃってます。
ただ、それでも補助金やなんやかんやで、生活は出来る。
食べるものも豊富にありますよね。例えば、お米、お酒、お水、塩もあります。
ところが、これが隣の長野県は何もないんですよ。
ですから農作物一つ取ってみても、作るのにものすごい知恵を絞って、昔から苦労されて長年やってこられているんです。
そのあたりの差が、今になって出てきている、と考えています。
竹本
規模が違うんですけど、よく似た話が私たちの採水地でもあったと聞いています。ちなみに私たちのアクアセレクトの採水地は「三重県大台町」と言います。
これは市町村合併で「旧大台町」と「旧宮川村」がくっついたんですね。
で、アクアセレクトは宮川村産なんです。その宮川村って急峻な山間が連続していて、とても農業が成り立たなかった。
それで本当に苦労されていて、飢饉のときに虫を食って飢えをしのいだ集落の話も残っているくらいなんです。
そういったことからも昔から「おれたち宮川村は、行政も村民も死ぬ気で何とか人を村に呼び込まないとダメだ!」という気概に満ち溢れていたと言うんですね。
ところが面白いことに旧大台町は、「まあ伊勢の隣だし、観光客はそれなりに素通りはしてくれるしね」という風にのん気に構えたそうなんです。
だから旧宮川村と旧大台町がくっついたときに、どっちが危機感を感じていたかというと、旧宮川村の方だそうなんですね。
名前は「大台町」になったけれど、旧宮川村の村民のみなさんは「旧大台町の職員や町民には危機感がない!」とか「旧大台町はなんて平和な考え方してるんだ!」と感じたそうなんです。
今の長野県と新潟県との関係のお話を聞くと、やはり追い込まれた地域の強みというか、そういったところが少し似ているなぁと思いましたね。
こちらは駅により近い商店街。商店街のアーケードと見るか、それとも雁木の名残りの風情と見るか。いずれにしても開府400年の歴史があり、そして豪雪という厳しい気候風土とともにある、上越の街。
真剣なお話の中にもユーモアあり、笑いあり。小林社長(右)と牧野社長のお話に引き込まれる。
竹本 大輔

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