
水のはなし
天然水の人びと
アクアセレクトGMの竹本大輔による水紀行
第14回 宮川その川文化編1
「天然水の人びと」第14回からは、宮川その川文化編。
アクアセレクト源流の「宮川」には、その上流部に「宮川上流漁業協同組合」という組合がある。今では、「鮎の友釣り」や「ひっかけ」の入川料の管理や、鮎の放流・養殖などが主な仕事だ。
ここ宮川には、その昔「川漁師」が存在した。
川漁師たちは、宮川の豊かな恩恵に与り、その良質な鮎やアマゴをひと夏の間だけ捕った。
そうすれば、1年は楽に暮せたという。
川漁師の仕事は、環境の変化、経済状況の変化により、今では廃れてしまっている。
しかし、ここで育て放流される鮎は、抜群に旨い。養殖でさえもだ。
そんな漁業協同組合長の水谷幸夫さんにお話を伺った。
子どもたちの川遊びや宮川の将来像などの真剣な話題の中、「しゃくり」や「ご自身の川遊び」に話が及ぶと、相好を崩され、楽しいインタビューになった。
ここ宮川には、その昔「川漁師」が存在した。
川漁師たちは、宮川の豊かな恩恵に与り、その良質な鮎やアマゴをひと夏の間だけ捕った。
そうすれば、1年は楽に暮せたという。
川漁師の仕事は、環境の変化、経済状況の変化により、今では廃れてしまっている。
しかし、ここで育て放流される鮎は、抜群に旨い。養殖でさえもだ。
そんな漁業協同組合長の水谷幸夫さんにお話を伺った。
子どもたちの川遊びや宮川の将来像などの真剣な話題の中、「しゃくり」や「ご自身の川遊び」に話が及ぶと、相好を崩され、楽しいインタビューになった。
素敵な囲炉裏部屋でのインタビューとなった。自然の光を取り入れた、柔らかな空間。ご自身の手作りだそうだ

囲炉裏部屋の裏には、水路が走る。ここの水もまた清冽(せいれつ)。

季節柄、タニシが這い回っていた。

「しゃくり」と宮川の達人たち
竹本大輔
今日はよろしくお願い致します。
今日は、宮川上流漁業協同組合(漁業組合)の取り組みとか、ここの鮎ってメチャクチャ美味しいんで、できればその秘密などをお聞かせいただければいいなぁと思っています(笑)。
ちなみにこの場所はお住まいなんですか?
今日は、宮川上流漁業協同組合(漁業組合)の取り組みとか、ここの鮎ってメチャクチャ美味しいんで、できればその秘密などをお聞かせいただければいいなぁと思っています(笑)。
ちなみにこの場所はお住まいなんですか?
水谷幸夫さん
(以下敬称略)
(以下敬称略)
わしは小切畑(こぎりはた)が住まいですんや。
ここは趣味の部屋やな。
※ここは天ケ瀬(あまがせ)という集落で、小切畑より上流、アクアセレクトボトリング工場よりは下流にある。
ここは趣味の部屋やな。
※ここは天ケ瀬(あまがせ)という集落で、小切畑より上流、アクアセレクトボトリング工場よりは下流にある。
竹本
なんと、素敵な趣味のお部屋!!うっとりしますね。
では、お仕事場はあの上流の「清流茶屋」のあるところですか?
では、お仕事場はあの上流の「清流茶屋」のあるところですか?
水谷
まぁそやけど、わしの本業は建築なんですわ。
組合長理事は非常勤やでさ。漁業組合と種苗センターは非常勤なんさ。
※種苗センターとは、「株式会社宮川上流鮎種苗センター」のこと。鮎の種苗、生産など、孵化から親魚の飼育を行っている。また各組合取引先にての出荷や生鮎、おとり鮎の出荷、販売も。
組合長理事は非常勤やでさ。漁業組合と種苗センターは非常勤なんさ。
※種苗センターとは、「株式会社宮川上流鮎種苗センター」のこと。鮎の種苗、生産など、孵化から親魚の飼育を行っている。また各組合取引先にての出荷や生鮎、おとり鮎の出荷、販売も。
竹本
なるほど!こういうお部屋を作るのが本業ということなんですね。
漁業組合がお忙しいのは、いつくらいですか?
漁業組合がお忙しいのは、いつくらいですか?
水谷
漁業組合は月の半分くらい関わっとる。年がら年中忙しいな。
月の半分は本業、月の半分は漁業組合と種苗センターやな。
月の半分は本業、月の半分は漁業組合と種苗センターやな。
竹本
非常勤で組合長をやられる経緯ってどういったものだったんですか?
水谷
だれかやらなしゃーねーなと言うことになって、組合長してから18年も経ったんさ(笑)
竹本
大ベテランでらっしゃいますね(笑)
水谷
そうなんさ。長いんさ。
竹本
漁業組合の主な仕事は?
水谷
「友釣り」とか「ひっかけ」とかの入川料を頂いて、入漁者に鮎を提供しとるのが主な仕事ですな。
※「ひっかけ」=ここ宮川地方では、1本針を用いた「しゃくり」と言う。隣の櫛田川水系でも「しゃくり」というが、4本針。東紀州・熊野地方では1本針の「ちょんかけ」。
※2~3メートルの細い竹の先に反しの無い針を差す。針自体は、竹竿の本体、竿先から15㎝あたりに、テグス・タコ糸・ゴムなどでくくりつけられる。その竿を持って水に潜り、泳いでいる鮎の背中を引っかける漁法。鮎を捕えると、竿先に差した反しの無い針が竿から外れる(しかし竿本体から外れることはない)。鮎は背中に針がかかったまま泳いでいるような格好になる。魚体を必要以上に傷めない伝統的な漁法。
※「ひっかけ」=ここ宮川地方では、1本針を用いた「しゃくり」と言う。隣の櫛田川水系でも「しゃくり」というが、4本針。東紀州・熊野地方では1本針の「ちょんかけ」。
※2~3メートルの細い竹の先に反しの無い針を差す。針自体は、竹竿の本体、竿先から15㎝あたりに、テグス・タコ糸・ゴムなどでくくりつけられる。その竿を持って水に潜り、泳いでいる鮎の背中を引っかける漁法。鮎を捕えると、竿先に差した反しの無い針が竿から外れる(しかし竿本体から外れることはない)。鮎は背中に針がかかったまま泳いでいるような格好になる。魚体を必要以上に傷めない伝統的な漁法。
竹本
おーっ!ぼく「ひっかけ」が大好きなんですよ。
実は三重県熊野市に友人がいて、学生時代に教えてもらって、それ以来ずっと好きで通い詰めてます。
鮎を引っかけたときにビクビクビクってなるのがたまらない感覚ですよね。
実は三重県熊野市に友人がいて、学生時代に教えてもらって、それ以来ずっと好きで通い詰めてます。
鮎を引っかけたときにビクビクビクってなるのがたまらない感覚ですよね。
水谷
そうやろ、面白いやろ。
「ひっかけ」は地元のもんしかアカンのんさ。
地元の人と一緒にはいったらエエねんけどな。
地元の人しかできへんのさ。
「ひっかけ」は地元のもんしかアカンのんさ。
地元の人と一緒にはいったらエエねんけどな。
地元の人しかできへんのさ。
竹本
ぼくも、そこの準漁業組合員になってます(笑)
竹本
「ひっかけ」の人口が減っているような気もするのですが?
水谷
だんだん減ってますわな。高齢化もしてます。
ぼくらの世代が一番やったんとちゃいますか?
ぼくらの世代が一番やったんとちゃいますか?
竹本
水谷さんもひっかけが得意でらっしゃいますか?
水谷
得意やなぁ(笑)そこらじゅうでひっかけよった。
竹本
人によっては、淵が得意とか、瀬が得意とかあると思うんですけれど、水谷さんはどちらが得意ですか?
水谷
ぼくは、腰勾配(腰くらいの深さ)が得意なんさ。一番捕りやすいわ。
竹本
竿の原材料の「竹」も自分で採って作るんですか?
水谷
そうさ、そうさ。
竹本
熊野では、8月の新月の夜に採った竹でちょんかけ(ひっかけ)の竿を作ると、虫が付きにくいって言うんですけれど、こちら宮川でも同じことを言ったりしますか?
水谷
同じように「秋竹(あきだけ)」がエエって言いますわな。その竹を炭で炙って油抜きして、曲げんのんさな。
いっぺんに曲げんと、油抜きして置いときますやろ、それで使う前に自分の好みになるように曲げるんさな。
いっぺんに曲げんと、油抜きして置いときますやろ、それで使う前に自分の好みになるように曲げるんさな。
竹本
そうです。そうです。
こちらでは、「ひっかけ」と言う呼び名でエエんですか?
こちらでは、「ひっかけ」と言う呼び名でエエんですか?
水谷
こちら宮川では「しゃくり」と言いますわな。
竹本
熊野では「ちょんかけ」って言いますね。
水谷
そうやな。
ただ櫛田川水系に行くと、同じ「しゃくり」と呼ぶけど、針が4本ついとるわな。
それでここ宮川の人らが他所へ行くと、嫌われるんですわな。
それもかなり嫌われるんです。
ただ櫛田川水系に行くと、同じ「しゃくり」と呼ぶけど、針が4本ついとるわな。
それでここ宮川の人らが他所へ行くと、嫌われるんですわな。
それもかなり嫌われるんです。
竹本
えっ?それはなぜなんでしょう?
水谷
他所よりも長い竿を使って、その淵の鮎は全部ひっかけてしまうやろ。
「宮川モンが来たら、何も残ってへん」とよー言われましたな。
「宮川モンが来たら、何も残ってへん」とよー言われましたな。
竹本
それは何ともすごいですね!!
この紀伊半島、特に三重県や和歌山県って川が豊かなんで、そう言われることはとてもすごいことですね。
やっぱり、宮川流域のみなさんは、人一倍この川に慣れ親しんでらっしゃるんですね。
この紀伊半島、特に三重県や和歌山県って川が豊かなんで、そう言われることはとてもすごいことですね。
やっぱり、宮川流域のみなさんは、人一倍この川に慣れ親しんでらっしゃるんですね。
編集後記
「宮川モンが来たら、魚は何も残っていない」とは、最高の名誉、そして勲章だろう。
「しゃくり」という漁法は、これは本当に鮎の行動や性質が分かっていないとなかなか捕ることが難しい漁法だ。
宮川の人たちが、そこにある当たり前の美しい川に馴染み、それを今も大事にしているということをひしひしと実感した。
「しゃくり」という漁法は、これは本当に鮎の行動や性質が分かっていないとなかなか捕ることが難しい漁法だ。
宮川の人たちが、そこにある当たり前の美しい川に馴染み、それを今も大事にしているということをひしひしと実感した。

竹本大輔