
水のはなし
天然水の人びと
アクアセレクトGMの竹本大輔による水紀行
第30回 幻の酒米「伊勢錦」稲刈り2
伊勢錦のこと
アクアセレクト採水地である三重県多気郡大台町唯一の酒蔵、元坂酒造さんでは、日本酒の仕込みに使う酒米(さかまい)の一部を自家栽培されている。それが今回取材の「伊勢錦(いせにしき)」だ。
「伊勢錦」は酒米の最高峰「山田錦(やまだにしき)」の祖先にあたるとも言われている品種でもある。
山田錦の母親にあたる酒米の「山田穂(やまだぼ)」。
そのルーツこそこの伊勢錦ではないかと言われている。
「その昔江戸時代末期から明治初年にかけて、田中新三郎がお伊勢参りの帰りに宇治山田で見つけた穂を持ち帰り兵庫県美嚢郡吉川町(現・三木市)で栽培したことに始まる」
そんな伊勢錦の実る姿は「実るほど頭を垂れる稲穂かな」の言葉を地で行く、穂姿だ。
「伊勢錦」は酒米の最高峰「山田錦(やまだにしき)」の祖先にあたるとも言われている品種でもある。
山田錦の母親にあたる酒米の「山田穂(やまだぼ)」。
そのルーツこそこの伊勢錦ではないかと言われている。
「その昔江戸時代末期から明治初年にかけて、田中新三郎がお伊勢参りの帰りに宇治山田で見つけた穂を持ち帰り兵庫県美嚢郡吉川町(現・三木市)で栽培したことに始まる」
そんな伊勢錦の実る姿は「実るほど頭を垂れる稲穂かな」の言葉を地で行く、穂姿だ。
コシヒカリの倍は垂れているのではないだろうか?その重みで穂先が地面すれすれになる。また米粒が1粒1粒大きいのは酒米の特徴だ。

鮮やかな秋空の広がる三重県多気郡大台町柳原(やなぎはら)の集落。空の青、木々の緑、そして稲穂の黄金色。いつまでも残したい日本の原風景。

元坂さん
伊勢錦は速く刈れないんですよね。
竹本
なぜなんでしょうか?
元坂さん
コシヒカリと違って背が高いからなんです。
竹本
確かに重そうに穂を垂れてますよね。
元坂さん
見てください、背丈がすごいでしょう。
コシヒカリと違って背が高いからなんです。

元坂さん
昔栽培の仕方も手探りで、コシヒカリと同じ肥料をやっておったら
200粒くらいついてしまって。
200粒くらいついてしまって。
竹本
なるほど、穂そのものが長いんですね。
これがお話にあった「おばあちゃんが担ぐと穂先が地面につく」長さなんですね。
これがお話にあった「おばあちゃんが担ぐと穂先が地面につく」長さなんですね。
元坂さん
ウチは稲と稲の間隔を広く植えるんで、余計に「分げつ(根に近い茎の関節から側枝が分かれて成長すること)」して太くなるんですね。
竹本
ハザ干しするときにコシヒカリだとだいたい4株くらいをひとまとめにして縛るんですが、これだと2株くらいが限界ですね(笑)
何かと重労働を強いられる品種ですね(笑)
何かと重労働を強いられる品種ですね(笑)
元坂さん
このあたりや宮川村でもこの伊勢錦を作ってもらってたんですけれど、やはり高齢化で作る農家さんが減ってきています。
竹本
そうですね。ぼくらも今年二反ほどの予定だったんですが、いつも田植えや稲刈りなんかでお客様が来られた際に駐車場をお借りしているお家があって、そこにお礼をご挨拶に行ったところ「あんたんとこでウチの田んぼも世話してよ」という話になったんです。「なんでですか?」と聞くと「息子がようやらんって言うてんのよ」って。
どこもそんな話ばかりですよね。
どこもそんな話ばかりですよね。
元坂さん
確かにそうですね。
竹本
若い方や子どもさんたちが来て盛り上げてくれると楽しくっていいですよね。
元坂さん
ところで、こういう酒米は後の楽しみがあっていいでしょう?
竹本
そうですね!
ご飯にして食べるという楽しみがあってそれはそれでいいんですけど、お酒というのは別格ですね。
ご飯にして食べるという楽しみがあってそれはそれでいいんですけど、お酒というのは別格ですね。
元坂さん
そうでしょう。
昔のパワーのあったときは、ここで「田植え祭」と称して公募で100人くらい集めて、一部は手植えして冬に酒造り体験して、というのをやっていたんですよ。
昔のパワーのあったときは、ここで「田植え祭」と称して公募で100人くらい集めて、一部は手植えして冬に酒造り体験して、というのをやっていたんですよ。
竹本
うわー楽しそうだ。
元坂さん
ただ断らなアカンくらい応募が来てしまいまして、やめたくらいなんです。
竹本
なるほど。イベントは一見楽しそうですけれど、やる方は大変ですからね(笑)
どういった公募をされたんですか?
どういった公募をされたんですか?
元坂さん
ウチはもともと「八兵衛の会」というのをやっていまして、それはウチの知名度が無かったんで、ファンクラブみたいなん作ろうやとなって、いろいろ募集して作ったんですね。
それで1回来ていただけるとお知り合いの方を連れてきてくれるんですね。
だから200人くらいやったんですけどそれがだんだん広まって1,000人くらいになって…。
それで1回来ていただけるとお知り合いの方を連れてきてくれるんですね。
だから200人くらいやったんですけどそれがだんだん広まって1,000人くらいになって…。
竹本
わあ、それは大変そうだ。ただそうやって賑わうことはとてもエエことですよね。
なかなかスピードの上がらない「伊勢錦」の刈り取り。垂れている穂を起しながら、ゆっくりと刈っていく。このスピードが中山間地の素晴らしい景色にちょうど合っている。

籾(もみ)を集める。稲刈り機は素晴らしい発明品、ノーベル賞ものですね、とはカメラマンの大川さんの言。確かにそう思う。

伊勢錦圃場にたたずむ、元坂社長。元坂酒造7代目、杜氏(酒造りの棟梁)さんでもある。


竹本大輔